豊福先生の部屋概説(狭義の舌痛症)

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概説(狭義の舌痛症)
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「患者はこういう作り話はしない。99%は本当のことを言う。もし患者の話がわけのわからないものだったら、それはたいてい、こちらが患者の脳で何が起こっているかを理解できるほど利口ではないことに原因がある」
V.S.ラマチャンドラン「脳の中の幽霊」(角川書店)より

歯科心身症の代表的疾患として「舌痛症」が良く知られていますが、その患者さんの65%が口腔乾燥感(ドライマウス)を伴うという報告があります。このような患者さんには抗うつ薬などの向精神薬がしばしば奏効します。抗うつ薬の副作用で唾液分泌は減少するはずなのに口腔乾燥感は改善するという逆説的な現象がみられるわけです。 一般的に口渇感は脱水などによる血漿浸透圧の上昇を視床下部の受容器が感受することによって生じるとされています。本症患者特有の自覚症状と局所所見の乖離は、視床下部より高位の中枢での生体内情報の解釈過程に障害があることを示唆しています。すなわち本症の病態は、口腔固有感覚の障害が中核をなし、脳内の神経伝達物質や受容体に関する生化学的異常と、思考や判断、記憶との照合などに関する高次脳機能(連合野機能)の障害という2つの側面を持っているものと推測されます。

To Manage Oral psychosomatic disorders and Drug-induced hyposalivationの図

従来、舌痛症には心理社会的因子が関与しているといわれ、「精神的なもの」として取り扱われがちです。しかし、器質的原因がはっきりしている患者さんは「まとも」で、そうではない患者さんは「こころの病気」などと言わんばかりの極端な二元論には賛同しかねます。単に舌が痛いから病院にかかったのに、「こころの病」「性格の問題」などという烙印を押され、放り出されたという患者さんもしばしば見受けられます。内科や耳鼻科などでも「命にかかわるものではない」「大したことはない」と言われ、この苦痛を良く分かってもらえない、あまり取り合ってもらえないということもしばしばあるようです。
患者さんの苦痛をいたずらに長引かせないために、「舌痛症」の慎重な診断と適切な治療が必要だと考えます。

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