中村先生の部屋シェ−グレン症候群の病因および病態に関する最近の知見

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  日本におけるシェーグレン症候群の患者数は50万から100万人と推察されています。本症候群は中年の女性に好発し、発症年齢は50歳代が最も多く、男性と女性の比は1対14程度とされています。前述のように自己免疫反応という免疫システムの異常により生じるものと考えられていますが、病因の詳細についてはまだ解明されていません。少し専門的になりますが、遺伝や環境といった複数の因子が関与していると考えられています。遺伝的には、HLAと呼ばれている主要組織適合抗原(そもそも白血球の血液型として同定されたが、核を有する全ての細胞が発現して移植の際に拒絶抗原となる)の一部が本症候群の発症に強く関わっていることが注目されています。また、ほとんどが女性に発症しますので、X染色体上の遺伝子や性ホルモン、さらに最近では母親の体内に胎児由来のリンパ球が生存するマイクロキメリズムが関与する可能性が報告されています。環境因子としては、レトロウイルスやヘルペス群ウイルスの感染が注目されています。専門的になりますが、本症候群の発症・維持・進展の免疫学的機序を図4にまとめています。

図4:シェ−グレン症候群の発症・維持・進展の免疫学的機序(仮説)

  発症機序としては、唾液腺や涙腺などの外分泌腺に浸潤しているリンパ球が自己免疫反応を引き起こしていると考えられていて、そのリンパ球の多くはT細胞であることが判っています。この自己反応性T細胞が外分泌腺に浸潤する機序、認識している抗原(自己抗原)、産生するサイトカイン(活性因子)などが詳細に解析されていて、発症機序を解明するうえで極めて重要な情報が得られてきています。

  また、自己反応性T細胞が攻撃する外分泌腺の導管上皮細胞も、HLA class II抗原(T細胞に抗原を提示する)、接着分子(T細胞の浸潤や活性化に関わる)、共刺激分子(T細胞の活性化に関わる)などを異常発現したり、サイトカインを産生したりすることが判っています。本症候群は慢性的に持続する疾患ですが、このような自己反応性T細胞と外分泌腺の導管上皮細胞との間で起こる相互作用が、その病態の維持に重要な役割を持っていると考えられています。 

  病態が進展する機序としては、自己反応性T細胞から産生されるサイトカインの種類が変化し、それによりB細胞の浸潤、増殖が誘導され、血清中の自己抗体の増加や高ガンマグロブリン血症が生じることが判っています。さらにこれが外分泌腺から全身性に拡がり、一部に外分泌腺局所やリンパ節でのB細胞性の悪性リンパ腫が発症すると考えられていますが、まだ不明な点が多く残されています。

  本症候群の発症・維持・進展の機序をさらに明確にすることは、より有効な治療を考える上でも極めて重要ですので、さらなる研究が望まれています。

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